さざれ石

身近な植物と鉱物のことなど アクセサリー作り

葛(クズ)のつるで作る小さなバッグとコースター

 

7月の葛糸のミニバック 9月に咲いた葛の花茶と葛花蜜

 

 日本三大古代布の一つ、葛布(他は芭蕉布、シナの樹皮から作るシナ布)。

 どこにでも生えている雑草の葛がその原料です。

 光沢のある葛布でできたバッグや帯は格好良くて憧れますが気軽に買えない高級品です。

 いいなー欲しいなー

 という気持ちから葛糸作りにチャレンジ。

 

① 素材集め 

 7月、河原に繁茂する葛の葉。

 ツルを絡ませながら木に沿って高く伸びる葛よりも、平地で横にまっすぐ伸びる葛が葛糸には向いています。

 アスファルトの道やコンクリートの階段に長く伸び出しているツルを採取しました。

イネ科の雑草も何本か一緒に取っておきます。

葉についている納豆菌の仲間の枯草菌が葛の外皮を発酵させる役に立ちます。

 50Lのビニール袋に入れた葛のツル。

 

② 発酵させる。

・ススキで覆い地面に置いて1-2週間発酵させる

・葛のツルを20-60分ほど似てからススキで覆い地中の室に2-5日寝かせる、あるいは地上に置いてブルーシートを被せる

 

 などの方法が調べると出てきますがあまりの暑さに雑な気持ちになりハサミも忘れたので引き抜きにくいイネ科の雑草は少ししか入れなかったし、ビニール袋に一緒に入れただけでベランダに1週間ほど置いておきました。

 細菌なんて少しの量いれておけば大繁殖しそうだったから...

  納豆を触ったお箸で茹でたもやしを混ぜただけで一晩冷蔵庫に入れ忘れたら大変なことになったし!

 

 夏のベランダは高温で、一部直射日光のあたる内部はむしろ滅菌されてるんじゃないか?などと心配しながらもたまにひっくり返しながら1週間。

発酵した雰囲気。

 

③靭皮を取り出す。

 毛の生えた外皮と木質の芯の間にある靭皮(じんぴ)を取り出していきます。

 下になった部分は染み出した液体に浸かってビショビショ、上は硬いまま残ってムラの多い仕上がりでしたが、ちょうど良いところはストッキングを脱がすようにするっと剥けます。

 伝統的には川の流水で行う作業ですがベランダに洗面器とジョウロを持ち込んでちまちま作業します。

 独特の発酵臭はくさいことはくさいけど慣れればそれほどでなく近所迷惑を心配するほどではない程度。

 何日か水を変えながら水にさらして日光に当てていると、硬く残った外皮も剥がれてきます。水の中の酸素が日光の作用でオゾンや過酸化水素が生まれ糸を漂白する過程でもあります。

 白くなった?

 たばねて流水(川)に晒すかわりに洗面器で揉み洗いしたので繊維がさけたりもつれたりしてほどくのが大変でした。

 乾燥したもの。

 

④ 糸を作る

 靭皮を1-2mm幅に割き、織り物や編み物の時に使う“はた結び”でつないでいきます。 

 よりをかけない葛の糸を使うことで光沢のある布ができる…が材料の量と技術的な問題から今回葛布作りは断念して組紐にチャレンジ。

 ハマナカの組紐ディスクを購入。

 よりをかけない葛糸というのが暴れて互いに絡んでディスクに上手く固定できないので結局また一晩かけてねじって撚り糸を作成。

 組紐ディスクには固定しやすいようカッターを入れて溝を調整して再チャレンジ。

 そして失敗。

 編めていなくはないけど組紐らしい美しい模様が全くでていない、なんだかボロいひも。

 全くの初心者なのに16本の組糸を使う笹波組を編もうとしたのも良くなかった気がします。もっと単純な組み方なら交互に引きしめたり均等に力をかけられたかも?

 途中で糸が切れるとリカバリーがとてもむずかしいので何度か切れたところで中止。

 

⑤葛糸で編む

 仕方ないのでかぎ針編み。

 長編みと鎖編みでつないでミニバックにしました。

 せっかくの葛糸の光沢が生かされていない、目がそろわず繊維が飛び出す素朴さ、実用性の低い小ささ、でもここまでの道のりを思うとすごく愛着のわくバッグが出来ました。

 細い繊維の切れ端も2-3本あわせて撚り糸にしてコースター作成!

 

まとめ

自然素材で一から手作りするのはとても大変。

辛いけどちょっと楽しい。

近代紡績技術は偉大で絹もコットンも化学繊維もありがたい。

 

各工程にやたら時間がかかり腕とか腰とか指先とか痛くなってもうこんなことやってられない!と思ったけれど終わるとまたやりたい気持ちが出てくる。

いつか葛布を作りたい。