ありふれてめずらしい、貴重なもの
子供のころ、海辺や道端で綺麗な小石を見つけて拾い、野に咲く小さな花を集めて遊びました。
濡れて日に透かすとキラキラ光る石英は宝石のようで、とりどりの花を摘むのも楽しい時間でしたが手の中ですぐに萎れてしまうのが残念でした。
春の七草の一つにも数えられる身近な野の花、ハコベ(ミドリハコベ)をピアスにしました。
早春の野に萌え出でるやわらかい若菜は、かつて貴人の手にも求められた貴重な食料でした。
君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ
古今集 光孝天皇
咲く季節が長いので、ハコベにはトキシラズという別名もあります。
ハコベはミドリハコベとコハコベの総称で、コハコベは茎が赤みを帯びて片側に繊毛がはえています。
屋外で花のついたミドリハコベとは中々出会えず、写真はベランダで摘んだミドリハコベ。
部屋で花を楽しめるかと思いましたが室内光のもとでは咲いている時間も短いのかいつ見てもつぼみと種ばかり。
水栽培でほっそりした花びらですがようやく撮れた、咲いている貴重な一枚。
生命力にあふれていながら小さくてはかなく、身につけることも飾ることもむずかしい花の姿をとどめておくために、金とプラチナとダイヤモンドでその形を写しとりました。
貴重な宝石の代表、ダイヤモンドは地下深く高温・高圧の環境から急速に地表近くへ押し上げられることで生まれます。
ダイヤモンド自体、この地球でまれな鉱物というわけではなく、年間の採掘量1億カラット以上、地殻の中には1000兆トンものダイヤが眠るとも推定されています。
ジュエリーになるダイヤモンドはその一部としても年間1500万カラット以上、ルビーの50万カラットと比べても多く流通しています。
現在では地下深くまで大穴を掘削したり、大規模に海底の砂礫をさらう事もしますが、ダイヤモンドがまず発見されたのは母岩が風化し砂礫となって運ばれた川辺や谷底、野原でした。
千一夜物語に出てくる危険な蛇の住むダイヤモンドの谷(商人たちは生肉を投げ込み、肉についたダイヤモンドを鳥に運ばせて手に入れる)のモデルとなるような、ダイヤモンドの結晶がゴロゴロしている谷間がかつては実際にあったかもしれないし、小さな谷間で何も知らない子供が半透明の綺麗な石を拾って遊んでいたかもしれません。
宝石としての価値が広く知られるようになったのは研磨技術が発達した15世紀以降のことで、それまでは水晶よりも価値のない石ころとして見過ごされたダイヤも多かったことでしょう。
高い屈折率を持つ研磨されたダイヤモンド(右上2番目)の輝きは肉眼で見ると一目瞭然です。さらに抜きん出た硬度、安定した流通があるからこその確立された品質評価基準や加工技術で今では人気と知名度において宝石の頂点に君臨しています。
野に咲く花、河原の小石、今日という平凡な日の特別な美しさのために
学名stellariaは星という意味、5角形の形から。