黄金よりも希少で高価だった銀
2024年4月現在、金の価格は20年前の10倍で歴史的な高騰となっています。
銀は純金の80分の1ほどで、比べるとずっと安く手に入ります。
けれども古代エジプトでは銀は金よりも高価な貴金属で、金の装飾品に銀メッキを行うこともありました。
純度の高い砂金が採取できる金と比べて、銀は自然銀として産出されるのはまれで、鉱石の採掘や精錬に手間がかかったからです。
16世紀に新大陸の銀山が発見されると銀の価格は暴落し、ヨーロッパの封建制度が崩壊する一因となりました。
銀の輝き
純銀はやわらかく変形しやすいので、アクセサリーや食器を作る時には銅などを少量混ぜた合金とします。シルバー925は純度92.5%、シルバー950は純度95%です。
スターリングシルバーは銅を合金としたシルバー925です。銀製品に含まれる合金のうち亜鉛やカドミニウムには変色を防ぐ働きがありますが、見て分かるほどの違いはほとんどありません。
白銀の清らかな輝きは黄金よりも美しいと好む人もいますが、時とともに輝きがくすんで黒味を帯びてしまうのが欠点です。
銀は錆びにくい(酸化しにくい)金属ですが、硫黄成分に反応して黒く硫化してしまいます。
硫黄泉の出る温泉街を訪れて、温泉に浸からずとも持って行ったシルバーアクセサリーが真っ黒になってしまったことはないでしょうか。
化粧品やシャンプー、ゴムに含まれる硫黄成分が変色の原因となることもあります。皮脂にも硫黄分が含まれていますが、表面がなめらかなシンプルな指輪などは日常的に触れていることで銀の硫化膜が剥がれて輝きが保ちやすくなります。
ゆで卵の白味に多く含まれるタンパク質にも硫黄が含まれていて、加熱すると銀を黒くする硫化水素が発生します。卵がアルカリ側になるほど(古いほど)、高温で長く加熱するほど硫化水素がでやすくなります。固ゆでたまごを銀器に盛り付けると器が変色するので気をつける必要があります。
銀器が貴族に人気だった時代、この黒化は必ずしも欠点ではありませんでした。銀は毒物に反応して黒くなると信じられていたからです。実際に、水溶性で無味無臭の毒物として人気だった当時のヒ素には銀器と反応する硫化ヒ素が含まれており暗殺を防ぐのに有効だったようです。
黄金より希少な銀色
ジュエリー・アクセサリーショップで取り扱う貴金属といえば黄金、プラチナ、シルバーですが、もう一つ私たちが目にすることが多い貴金属はロジウムです。
銀色のロジウムは硬く、腐食しにく、アレルギーの原因にもなりにくいため銀製品を保護するメッキとしてよく使われます。
ロジウムはプラチナとよく似た性質を持つ金属です。地殻中に存在するプラチナは金の10分の1に満たない量ですが、ロジウムはプラチナよりもさらに希少で、安定同位体を持つ元素の中では3番目にレアな物質です。近年は電子部品や自動車用触媒としてもロジウムの需要が増し、2021年には金の10倍以上もの価格で取引されていました。
その後価格は落ち着いてきていますが、現在でも「最も希少で最も高価な貴金属」と言われるのがロジウムです。
銀のお手入れ
①拭く・磨く
平らな面であれば指や柔らかな布で拭き取るだけでもある程度黒ずみはとれますし、
研磨剤入りのシルバークロスを使っても良いでしょう。重曹を研磨剤がわりにして歯ブラシで磨く方法もあります。
※メッキ製品はメッキが剥がれる可能性があるので研磨剤の含まれるものは避けてください。
②重曹(塩)とアルミホイルでクリーニング
研磨して細かい傷をつけたくない!という時、形が複雑でうまく磨けないという時。
※ シルバー以外の素材を用いたアクセサリーは熱や化学変化の影響を受ける可能性があるので避けてください。
用意するもの
・金属性でない容器
・アルミホイル
・熱湯 約300ml
・塩または重曹 大さじ1
方法
①容器にアルミホイルをしいて塩(重曹)を入れる
②シルバーアクセサリーを置いて熱湯を注ぐ
クリーニング後 金具の洋白・ロウ付け部分は少し黒みがのこりました
3Ag2S + 2Al → 6Ag + Al2S3
アルミニウム(Al)が銀(Ag)よりも硫黄(S)とくっつきやすい性質を利用したもので、銀を黒くしていた硫黄がアルミニウムに移動します。
重曹(重炭酸ナトリウム)がアルミニウムの表面についた酸化ナトリウムの薄膜を取り除き、塩化ナトリウムはイオンの移動を助けることで反応を促します。
この方法で小さなアクセサリーは数秒で綺麗になりましたが、面積の大きなもの、長年の硫化膜がついたものは銀色の地肌が戻りませんでした。
石の入った持ち手を外してアルミホイルと共に塩と重曹を合わせた溶液で煮込むこと数分。
黒ずみがアルミ側にうつって白銀色の地肌が戻りました!